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高齢発症に要注意!

関節リウマチ 情報最前線(前編)

関節が炎症を起こし次第に変形してしまう関節リウマチ。近年では60代以上で急激に発症する人が増えているのだそう。今回から2回に渡り、フジ虎ノ門整形外科病院整形外科医の小松美月先生に関節リウマチにまつわる最新情報を教えていただきます。

■高齢者の発症が増えています
みなさんは「関節リウマチ」と聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか? 外来ではじめて関節リウマチのお話をすると「関節がひどく変形して歩けなくなってしまうのですか?」「ずっと痛みが続いて将来は寝たきりになってしまうのですか?」ととても悲しい表情をする方がたくさんいらっしゃいます。このイメージは以前は必ずしも間違っているとは言えませんでした。しかしここ数年で、確実にこういったイメージは過去のものになりつつあることを始めにお話ししておきます。
関節リウマチとは、全身の関節に原因不明の炎症・腫れがおこり、関節がこわれていく病気です。関節の炎症が続くと、関節の骨や軟骨がこわれていきます。一度こわれてしまった骨や軟骨はもとに戻らないため、まずは早期に適切に診断・治療する必要があります。
関節リウマチは、毎年約1万5000人が発症し、100万人近くの患者さんがいるといわれています。150人あたりに1人くらいは関節リウマチの患者さんがいる計算になり、けっして珍しい病気ではないため「知り合いにリウマチの患者さんがいる」という方も
少なくないと思います。
一般的には30~50代で発症する人が多く、男性の4倍、女性に多い病気です。ところが小松先生によると、高齢化がすすんでいることを反映して、近年では発症の傾向が変わってきているのだそうです。
「今は60代以上の高齢発症が増えていて、関節リウマチ全体の2〜3割を占めています。高齢発症の関節リウマチは、男女の割合が1対1と、男性の患者さんが増えるのが特徴です」。若い頃は何もなくても突然発症するそうなので、今はどこも痛くないという人も注意が必要です。
では、どんな症状が出るのでしょうか? 通常の関節リウマチは、朝起きた時に手指のこわばりを感じる、手首や指の関節が痛み、腫れが続くなどの症状から始まります。最初に左右どちらかの関節が痛くなり、やがて両方とも痛くなるのが関節リウマチの典型的な症状と言われています。一方、高齢で発症するリウマチの場合は、股関節や肩、ひざなどの大きな関節に、急激に痛みが出ることが多いそうです。例えば、急に肩が痛くなり、様子をみていたらもう片方も痛くなってきた、という時は関節リウマチを疑ってみた方がよいかもしれません。

 

■五十肩と思ったら実は関節リウマチということも
「高齢者の関節リウマチで問題なのは、元々変形関節症にかかっていたり、五十肩などと区別がつきにくかったりして、関節リウマチと診断がつかないまま、病気が進行してしまう患者さんが多いことです」と小松先生。
整形外科では関節のレントゲン撮影や血液検査を行い、関節リウマチかどうかを診断します。五十肩と思っていたら実は関節リウマチで、治療を始めたら劇的に症状が改善したというケースもあるそうです。なかなか治りにくい「五十肩」や「そうこうしてきたあちこちの関節に痛みや腫れが出てきたな」と感じたらリウマチ専門医にも相談してみることをおすすめします。
また「関節リウマチは遺伝的な病気」というイメージを持たれる方が多いからか、「家系にリウマチの人がいないから、自分はリウマチにはならない」と考えている方はまだまだ多いようです。遺伝的な要素は1〜2割で、何らかのウイルス感染、喫煙、ストレス、疲労なども発症の引き金になり、だれでも発症する可能性のある病気であることも知っておいてください。
小松先生の診察では、関節リウマチと診断した患者さんに「リウマチは一生治らないのですか?」と聞かれることも多いとか。「かつては痛みや腫れを抑える薬が中心でしたが、今は薬が年々進歩していて、病気そのものを抑えることができるようになっています。早期発見、早期治療が大事ですよ」と、小松先生も力強く答えてくださいました。
次回は、進歩した関節リウマチの治療法について、引き続き小松先生に伺います。

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

フジ虎の門整形外科病院

小松 美月 先生

日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医

治療で進行を抑えることが可能に

関節リウマチ 情報最前線(後編)

関節が変形して歩けなくなる、将来は寝たきりになるなどのイメージが強かった関節リウマチ。しかしこの十数年で薬が進化し、治療で病気の進行を抑えることができるようになってきたそうです。前回に続き、フジ虎ノ門整形外科病院整形外科医の小松美月先生に関節リウマチの最新治療について教えていただきます。

■新薬の開発によって治療法が年々進歩
前回もお話ししたように、関節リウマチとは、全身の関節に原因不明の炎症・腫れが起こり、関節の骨や軟骨がこわれていく病気です。一度こわれた骨や軟骨は元には戻らず、かつては病気が進むと歩けなくなったり、寝たきりになったりする患者さんもいました。そのため今でも「関節リウマチは治らない病気」というイメージを持つ人が少なくありません。
しかし現在の関節リウマチの治療法は、全く違います。なぜかというと、新しい薬が次々に出てきて、治療法が年々進歩しているからです。十数年前までは痛みや腫れを抑える薬が主流でしたが、現在は病状の進行を遅らせる効果のある飲み薬や、「生物学的製剤」といって、関節がこわれるのを防ぐ効果を期待できる新しい薬がバイオテクノロジーによって開発され、個人差はありますが、病気そのものを抑えることもできるようになってきています。
関節リウマチの治療の目的は、
①関節の痛みや腫れを軽くする
②関節がこわれる「関節破壊」の進行を止める
③日常生活の動作をスムーズに行えるようにする
ことです。
①②③の目標を一時的にではなく、長期に渡って達成して病気の進行が止まった状態(医学用語で「寛解(かんかい)」と言います)を維持することが、さらに大きな治療の目標になります。
医師は血液や尿の検査、レントゲンやエコーなどの画像検査の結果からリウマチの状態を判断して治療を進めます。症状が軽い場合はまず飲み薬を飲んでもらい、それで症状が落ち着いてくればよいのですが、飲み薬だけでは症状を抑えきれない場合には、生物学的製剤による治療に進みます。

 

■病気の進行を止める可能性がある生物学的製剤
生物学的製剤は、腫れを抑えるだけでなく、骨がこわれるのを強く抑えることができるため、病気の進行を止められる可能性があります。以前は、関節リウマチはゆっくりと進行していくものと考えられていましたが、最近の研究の結果、症状が現れてから数年で急速に炎症が進み、早い時期から関節の骨がこわれ始めることがわかってきました(グラフ参照)。
ですから、病気の進行を抑えて関節を守るためには、できるだけ早い時期に適切な治療をスタートさせることが、とても重要と考えられるようになったのです。
生物学的製剤は現在8種類あり、それぞれ特徴が異なります。投与方法も点滴、皮下注射があり、点滴は病院で行いますが、注射は病院だけでなく自己注射で行うことも可能です。また、最近では生物学的製剤と同等の効果が期待できるジャック阻害薬という飲み薬も4種類あり、注射製剤に抵抗のある方でも、治療しやすくなってきています。治療薬に多くの選択肢があるため、リウマチの状態や治療中の病気の有無、また患者さんの生活環境や仕事、通院できる頻度などによって、患者さん自身が無理なく治療を続けられる方法を選ぶのがよいでしょう。
リウマチは慢性の疾患ですので治療は長期に渡り、症状は良くなることもあれば悪くなることもあります。だからこそ、定期的に医師の診察を受け、病気の状況を見ながら、その時々に応じた治療を受けて行くことが大切です。
以前は関節リウマチが悪化して手術を受け、人工関節を入れる患者さんもいましたが、ここ10年ほどでリウマチの手術はずいぶん減りました。薬によって病気の進行を抑えることができるようになったからです。リウマチは今や、それほど悲観的にならなくてもいい病気になったと言えるでしょう。リウマチ患者さんの友の会などもありますので、治療や症状について情報交換したり、リウマチ専門医の講演を聞きに行ったりするのもいいですね。
そうは言っても、早期治療のタイミングを逃すと、関節がこわれて手術が必要になる人もいます。手指がこわばる、手首や肩が急に痛くなるなどの症状が出たら、早めにリウマチ専門医の診察を受けることをおすすめします。

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

フジ虎の門整形外科病院

小松 美月 先生

日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医

いつもと違うその痛み…

骨折かもしれません(前編)

年齢を重ねるに連れリスクが増す骨折。寝たきりになることで、急激に筋力や認知力が衰えてしまうことも。高齢者と骨折の「キケンな関係」について、背骨と脊髄の専門医、土田隼太郎先生に教えていただきました。

■座る、立ち上がる、荷物を持つ。日常の動作にも落とし穴が。
骨折の原因というと、まず転倒が一番に思いつきますが、実はある程度の年齢を過ぎたら、転ばないのに骨を折ってしまう人が少なくないとか。
「高齢者で骨折が多い部位として上げられるのはまず脊椎(背骨)です。背骨というのは身体全体を支えるための強度が必要なのですが、年齢を重ねることで骨がその負荷に耐えられなくなると、立ち上がる、座る、物を持つ、といった簡単な日常の動作だけでも、ミシミシっとつぶれてしまうんことがあるんですよ」と土田先生。
ちょうど背骨がS字状に曲がっているところ、医学用語でいう「胸腰椎移行部」という部位に最も負荷が集中しやすく、骨粗しょう症などで骨密度が落ちていると、軽く尻もちをついただけでも、連なった骨の一つがミシっとつぶれるように折れてしまうのだそうです。
「足の骨の場合は、折れたら普通は歩けません。でも背骨の圧迫骨折の場合は、立ち上がるまでは痛くても、一度立ってしまえば歩くことができるんです。しかも折れた箇所とは違う、離れた部分に痛みが生じたり、安静にしていると痛みが治まったりすることもあるので、骨折していても見落としたり、放置してしまうケースも少なくありません」
患者さんの中には、受診することでようやく骨折と診断され、長く続いた痛みの原因がわかってホッとする方もいらっしゃるとか。
「骨折とそうでない場合とでは、治療法がまるで違います。その後の適切な治療と早い回復のためにも、歩けているから大丈夫ではなく、転んでも転ばなくても、いつもと違う痛みがあったら骨折を疑うことが必要です」
土田先生によると、健康に限って言えば、(痛みに)我慢強い人よりもすぐに弱音を吐く人の方が、早めに病院を受診するので、診断も早くついて手遅れになることが少ないそうです。高齢者もその家族も、動けているからと見過ごさず、気になる痛みがあったら、そのまま放置せず、先ずは診察を受けることを習慣にしたいものです。

 

■骨折は認知症の入り口!?
高齢になってからの骨折は、認知症の引き金になることがある、という話をよく耳にします。いったいどんな原因があるのでしょうか。
「骨折でベッドに寝たきりの時間が長ければ長いほど、身体の筋力が低下し、認知機能も徐々に落ちていきます。また入院による急激な環境の変化で精神的なストレスが増し、言動や行動が不安定になってしまう方もいらっしゃいます」
それまで認知症の症状がまったくなくても、入院して数日で家族が驚くほど変化してしまう高齢の患者さんも。
「患者さんを安心させるために、ご家族には入院中もなるべく顔を見せてあげて下さいとお伝えしています。それだけでストレスは随分、和らぎますから。ご家族の精神的なサポートと、痛みを取り、寝たきりにさせないための正しい治療で、骨折してもできるだけ認知症にならないように努めています」
残念なことに高齢になればなるほど、一旦骨折して歩かないでいると、その後のリハビリで骨折する前の筋力に戻るまでには、若い時と比べ、かなりの時間を要してしまうとか。医療の現場では一般的に、丸一日寝ていると3日、一週間寝ていると一カ月、一カ月以上になると完全に元の状態に戻すことは難しいと言われているそうです。
「ベッドで寝たまま動けないという時間をいかに短くし、的確な治療によって一日でも早く体を起こすことができるようにしてあげること。これが、患者さんの今後の生活にとって重要であり、私たちの大切な役割なんです」
まずは骨折が疑われたら一日も早く受診し、専門の医療機関による質の高い治療を受けること。これが骨折を認知症に結びつけない方法だといえるでしょう。次号では、骨折しないための日常生活の工夫、万が一、骨折してしまった場合の寝たきりにならないための治療、手術、その後のリハビリについてのアドバイスを土田先生にうかがう予定です。ご期待ください。

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
社会医療法人青虎会理事長

土田 隼太郎 先生

整形外科専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医(3種)
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医

いつもと違うその痛み…

骨折かもしれません(後編)

体を動かせないことや、慣れない入院で、認知症につながるケースもあるという骨折。不安を抱くその前に、丈夫な骨づくりや寝たきりさせないための治療について、前回に引き続き背骨と脊髄の専門医土田隼太郎先生に教えていただきます。

■日々、こつこつ。明日の不安の解消は、今日の「骨活」から。
シニア世代は、転倒だけでなく荷物を持つ、立ち上がるといった日常の何気ない動作が骨折に結びつき、筋力の低下や入院のストレスによって認知症の引き金になってしまうことがあります。前号では土田先生から私たちに、そんなちょっと耳の痛いお話をしていただきました。とはいえ、毎日を骨折の心配ばかりして過ごすわけにはいきません。ここは前向きに、人生の収穫期を安心して過ごすための暮らしのコツを、土田先生と一緒に考えていきましょう。
まずは背骨が体の重さを支えきれず潰れてしまう圧迫骨折などの原因としてよく知られている骨粗しょう症。この病気は男性より女性の方が圧倒的に多いというのは本当でしょうか。
「女性には申し訳ないですが9対1の割合くらいで、女性の方が多いですね。妊娠、出産でカルシウムが減り、加えて骨の強度を保つ作用のある女性ホルモンが閉経後に減少してしまうという2つの原因が重なることで、男性と比べて大幅に骨がもろくなります。ただし男性でも胃腸の疾患があり、つねに薬を飲んでいるような方は、カルシウムを吸収できないケースもあるので、定期的に骨密度を検査することをおすすめします」(土田先生)
骨折しにくい骨づくりのための日常の気配りは、実はそんなに難しいことではないそう。
「食事と運動と紫外線を浴びること、ポイントはこの3つです。食事は、カルシウムの摂取を必要以上に意識するのではなく、まずはバランス良くが大切です。サプリメントに頼るのもいいですが、あくまで補うという感覚で、メインの栄養素はなるべく食事から摂って下さい。運動は、歩いていればそれで十分です。3つめの紫外線ですが、最近は美容の大敵のようなイメージがあって、どこに行くにも帽子を目深に被ってガードしてしまう方もいらっしゃいますが、骨のためにはあまり良くないですね。一日、10分~15分ほど外に出たり、窓際で日光浴するだけで、強い骨づくりに欠かせないビタミンDが十分につくられます」
なるほど、それなら無理せず「骨活」に取り組めそうです。

 

■たとえ骨折しても、 適切な治療や手術で充実のシニアライフはまだまだ続きます。
何十年もの間、私たちを支えてきてくれたシニア世代の骨。どんなに注意していても、骨折への心の準備はある程度必要です。
「高齢の方が転倒して骨折する箇所は、だいたい決まっていて、手首と股関節と背骨です。そのうちで寝たきりになる可能性があるのは股関節と背骨。この二箇所を骨折した場合は、動けないことや慣れない入院生活により、身体と精神のストレスが大きくなり、それをきっかけに認知症となる恐れがあります。患者さんには外来に来られた時点で、予想される経過と治療の選択肢をていねいに説明して、先ずは安心して、これからの治療に取り組んで頂けるように心がけています。車を運転していて渋滞に遭っても、その先の工事が原因だとわかっていたらイライラしないでしょう。患者さんの心理も同じで、痛みの原因とその先の治療法を自分でしっかりと把握できていれば、骨折したことへの不安は少なくなるはずです」
土田先生をはじめ経験豊かな専門医が多く常勤するフジ虎ノ門整形外科病院は、BKP治療(バルーンカイフォプラスティの略で2011年1月より公的保険が適用されるようになった脊椎圧迫骨折の最新の治療法)など、患者にとって治療の選択肢の幅が広いのが魅力です。
「手術をすることで痛みや身体的な不安をいち早く取り除き、それによって精神的なストレスも軽減させることは、認知症予防にはとても効果的です。自分で歩ける体力があれば大丈夫。リスクより治療効果が上回ると判断できたら、百歳でも手術される方はいますよ」
同病院では、骨折にとって重要な術後のリハビリも、担当医の指導のもと、理学療法士や作業療法士などリハビリ科の医療スタッフが連携して、効率的にサポートしてくれるそう。たとえ高齢で骨折しても、適切な治療を受ければ、趣味などのやりたいことをあきらめることなく、充実した日常生活を続けることができると聞いて、一安心です。「楽しく、長生き」のために、豊富な治療実績のある専門の医療機関は心強い存在だといえるでしょう。

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
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休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
社会医療法人青虎会理事長

土田 隼太郎 先生

整形外科専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医(3種)
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医

幸福で有益な長寿のための知識

生命の科学 アーユルヴェーダ(前編)

インドの伝統医学として知られるアーユルヴェーダ。フジ虎ノ門整形外科病院で東洋医学科・漢方内科の外来担当医を務める上馬塲和夫先生は、日本の医学界におけるアーユルヴェーダ研究の第一人者として知られています。今回から2回に渡って、上馬塲先生が考えるアーユルヴェーダと、その治療方法などについてお話を伺います。

■瞑想・ヨーガからアーユルヴェーダに出会う
アーユルヴェーダは基本的にはインド伝統医学と言われているものですが、私自身はインドのものを日本に紹介しようとは、当初も今も考えていないんです。40年前に広島大学医学部を出て、東洋医学と西洋医学を融合する研究をしようと考えていましたが、まずは西洋医学の幅広い研修を受けようと、東京の虎の門病院にレジデント(研修医)として入りました。
その後、北里研究所の付属東洋医学総合研究所に入職して漢方と鍼灸、漢方薬理の臨床と研究をする中で、漢方医学は私の考える東西医学を融合するものではないと気づきました。そこで「六本木クリニック」を開業して、自分なりの東西医学を融合する研究と臨床をしていたのです。
その時に出会ったのが、瞑想・ヨーガです。ヨーガは古代インドの健康法・修行法ですが、同じようにアーユルヴェーダという古代インドから伝わる伝統医学があることを知り、インドから先生を呼んで研修を受けました。特に脈診の研究・実践をしていまして、Vasant Ladという人が書いた英語の本を翻訳して「現代に生きるアーユルヴェーダ」という名前で上梓したこともあります。
そんなふうにヨーガからアーユルヴェーダを知り、実際に脈診を実践すると「これは素晴らしいものなので、ぜひ日本・世界の人たちに知らしめなくてはいけない」と思うようになりました。それでもう一度北里研究所に帰り、ちょうどその時にできた臨床薬理研究所に入って、そこの被験者を使って脈診の研究を同時にさせてもらいました。脈診は非常に面白くて、オーストラリアに現代医学の見地から脈波解析をやっている先生がいるのを見つけて、一年ほど留学したこともあります。

 

■アーユルヴェーダが東西の伝統医学を統合する幹になる
その後は、富山県に新しくできた国際伝統医学センターに呼ばれて、伝統医学の研究をしていました。そこではインドのアーユルヴェーダだけではなく、イスラム諸国や中国、ペルーなど各国の伝統医学の研究をさせていただいたんです。その中で、世界の伝統医学には似ているところがたくさんあることを知りました。
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語で生命の科学という意味ですが、古代インドの教科書には「生命の科学であり、幸福で有益な長寿のための知識」という定義がしてあります。ということは実は中国の伝統医学も、イスラムの伝統医学も、ペルーの伝統医学も、現代医学さえも、アーユルヴェーダと呼んでいいのではないか、そう呼ぶことで東西医学を融合させることになるのではないかと気づきました。そうして今は、インド伝統医学としてのアーユルヴェーダではなく、すべての東洋医学と西洋医学を融合したものとしてのアーユルヴェーダを実践あるいは体系化しようとしています。(次号に続く)

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
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休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
八十島 恵美 先生(やそじま えみ)

フジ虎ノ門整形外科病院
東洋医学科外来担当医
漢方内科外来担当医
ハリウッド大学院大学教授
内閣府認証NPO法人日本アーユルヴェーダ協会理事長
一般財団法人東方医療振興財団理事
日本統合医療学会 元認定指導医
帝京平成大学客員教授
医療法人ホスピィー統合医療研究所所長

幸福で有益な長寿のための知識

生命の科学 アーユルヴェーダ(後編)

インドの伝統医学として知られるアーユルヴェーダ。その研究の第一人者として知られる上馬場和夫先生は、現代医学に東洋医学とインド医学を取り入れて治療に当たっておられます。今回は、インド医学の独特な治療方法から、自宅でできる食事療法、セルフケアなどを教えていただきました。

■インド伝統医学では内服だけでなく皮膚や鼻も含む全身の孔からも投薬
漢方内科では、よく風邪を引くとか、腰痛、肩こり、首痛、頭痛が痛み止めだけではなかなか治らないという人に、生活の仕方を指導したり、漢方医学的な薬を処方したりしています。それでも良くならない人には、瀉血療法と言って血を出す療法をしたり、東洋医学的な鍼治療をしたり、点鼻をやったりもします。
インドの伝統医学は面白くて、内服だけじゃないんです。漢方薬も現代医学も内服が主ですけど、インドの医学は薬用オイルを塗ったり、頭に垂らしたり、皮膚から投与したり、耳、目、膣、肛門などからも投薬します。そこからオイルに溶け込んだ薬草の成分を吸収させるんです。
点鼻は現代医学も最近よくやるようになりまして、注射や内服で分解されてしまうホルモンも、点鼻なら静脈を通って脳内に入れることができるんです。点鼻は自由診療ですが、ぜんそくや花粉症にも効きます。食事療法も大事で、保険診療でも自由診療でも食事のことはかなり詳しく説明しています。
広義のアーユルヴェーダでは、小麦・乳製品をとると身体がだるく疲れやすくなったり、湿疹が出やすくなると言われていまして、私も患者さんに小麦を食べ過ぎないように、乳製品を摂りすぎないようにとお伝えしています。小麦は週2回くらいまでにして、日本の稲作や米文化をもっと見直そうという意味も含めて、できるだけお米を食べましょう。白米より胚芽米にするといいですね。乳製品は、牛乳の中に含まれている物質が細胞の増殖を促すと言われていますので、子どもはいいのですが、がん細胞が増えてくる50代くらいになったら牛乳は基本的にとらない方がいいでしょう。

 

■死生観も含めてアーユルヴェーダを広く伝える
さらにセルフケアとして、ヘッドマッサージや手足のオイルマッサージを勧めています。ヘッドマッサージは頭痛や不眠に、手足は、手のしびれとか、足の冷えに効果があります。また図のような舌掃除も舌の苔がある人にはおすすめです。さらに脊柱管の中の静脈を流すために、ねじりながら呼吸をする静脈しぼりの体操を紹介します。ぜひやってみてください。
あとは呼吸法を介したマインドフルネスです。マインドフルネスというのは過去を後悔したり、未来のことを不安に思ったりするのではなく、今の心地良さを感じること。それを1日10分8週間続けると海馬が大きくなって、扁桃体が小さくなる。ストレスが少なくなる、遺伝子の発明も変わってくると報告されています。患者さんにおすすめです。
アーユルヴェーダを生命の科学というふうに呼んだもう一つの理由は、死生観です。日本は特に死を忌み嫌う傾向がありますが、死は日常に、特に病院にいますとありますし、患者さんの気持ちを楽にしてあげる場合にも、死生観が非常に大事ではないかと考えています。いろんなところへ行っても治らないという人たちには、死生観的な観点から説明して「病気をすることで実は学びをされてるんじゃないですか」という話をすることもあります。治らなくても本人の考え方次第でクオリティ・オブ・ライフは良くなると言われています。以上のようなことで患者さんに広い意味の生命の科学、幸福で有益な長寿をもたらすための知識をお伝えしています。

 

■20年来の体調不良が改善
40歳代のAさんは、20年前の交通事故以来、頭痛、倦怠感、強い生理痛、湿疹、腹痛などで、種々の現代医学的な検査や治療をやって来られましたが、殆ど改善が有りませんでした。2019年6月から私の外来に来られるようになり、食事指導から考え方に至るまでの治療を月1回受けられてから明確に改善し、20年間で初めて正月のお年賀に出かけることが出来るようになられました。疲弊している医療者のために、定期的な検査だけでなく総合的なケアを行う施設でも活用できるでしょう。

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リハビリテーション病院

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八十島 恵美 先生(やそじま えみ)

フジ虎ノ門整形外科病院
東洋医学科外来担当医
漢方内科外来担当医
ハリウッド大学院大学教授
内閣府認証NPO法人日本アーユルヴェーダ協会理事長
一般財団法人東方医療振興財団理事
日本統合医療学会 元認定指導医
帝京平成大学客員教授
医療法人ホスピィー統合医療研究所所長

あなたのお口は大丈夫?

口腔機能低下症(前編)

ご飯を食べたり飲み込んだり、人と話したり、お口の働きは日常生活を送る上で欠かせないものです。しかし加齢や病気の影響などで噛む力や舌の動きが衰えると、口から食べられなくなって全身の健康に悪影響を及ぼすことも。今回は、お口の機能低下についてフジ虎ノ門整形外科病院の八十島恵美先生に教えていただきます。

口の中の働きは加齢によって少しずつ低下する

 

口腔機能低下症とはどのような病気ですか?
噛む力や舌の動き、飲み込む力が弱くなるなど、お口の中の働きが低下した疾患(病気)のことです。今までは摂食嚥下障害になる前の段階というだけだったのですが、昨年4月の改訂で新たに疾患(病気)として定義され、診療で対応できるようになりました。

 

何が原因で発症するのですか?
主には加齢によるものですが、むし歯や歯周病、合わない入れ歯など口の中の要因に加えて、全身の病気や薬の副作用、栄養不足などが原因になることもあります。
発症の第1段階としては、口の中に対する関心度が下がり、虫歯や歯周病にかかりやすくなるところから始まります。
第2段階では、口腔機能が少しずつ低下し始めて、
①滑舌の衰え
②食べこぼし
③わずかなむせ
④噛めない食品の増加
といった、些細な症状が現れてきます。この状態を「オーラルフレイル」と言います。これが進行すると第3段階の口腔機能低下症になり、そのまま放っておくと第4段階に進み、水や食べものを上手く飲み込めなくなる摂食嚥下障害になり、要介護状態に進む恐れがあります。(図解参照)

 

自己チェックしてあてはまったら歯科医院で検査を

 

自分が口腔機能低下症にかかっているかどうかは、どうしたらわかりますか?
歯科医師による検査があります。口の中の乾燥度、噛む力、舌の圧力、口唇の運動機能、ものを噛み砕く力など7項目の検査を受けていただき、そのうち、3項目以上該当すると、口腔機能低下症と診断されます。歯や歯周病の治療に来た患者さんがうがいの時にむせていたり、話していてのどがゴロゴロしているのがわかったりすると、口腔機能低下症を疑って、こちらから検査をしましょうか? と提案することもあります。

 

年齢的にはどのくらいから気をつけた方がよいですか?
65歳から80歳までの間でしょうか。まだまだ自分は大丈夫と思っていても、実はオーラルフレイルが始まっている人もいらっしゃいます。オーラルフレイルや口腔機能低下症は、健康と口腔機能障害の中間にあり、早めに気づいて適切な対応をすることで、健康な状態に戻すことが可能です。自分でできる簡単なチェック項目(別表)もありますので、一つでも当てはまったら早めに歯科医院を受診することをおすすめします。(次号に続きます)

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
八十島 恵美 先生(やそじま えみ)

東京歯科大学卒業。
老年歯科学会会員、摂食嚥下リハビリテーション学会会員、障害者歯科学会会員。口腔機能低下の評価とリハビリの提案に積極的に取り組む。趣味はゴルフ。

始めよう! お口の健康体操

口腔機能低下症(後編)

固いものを噛めない、むせやすいなどお口の機能低下を放っておくとやがて口から食べることが難しくなって要介護状態に進む恐れがあります。お口の健康が気になり始めたら自宅で簡単にできるお口の体操でお口のまわりの筋肉を鍛えましょう。前編に続き、フジ虎ノ門整形外科病院の八十島恵美先生にお話を伺いました。

8020運動からオーラルフレイルの予防へ

 

高齢者のお口の健康については「8020運動」が広く知られています。
平成元年から、生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるようにとの願いをこめて「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」をスローガンに「8020運動」が行われてきました。この運動が提唱された当初は、80歳で20本以上の歯がある人はわずか5%程度でしたが、現在では50%を超えるほどになっています。

 

半数以上の方が8020を達成しているのですね。自分の歯を保つという意識が高まったのは素晴らしいことです。
はい。そこで「8020運動(歯の数の維持・管理)」をさらに発展させて、「オーラルフレイル予防(お口の機能の維持・増進)」で健康長寿をサポートしようという考え方が加わってきたのです。

 

お口の健康がイコール身体の健康につながるのですね。
摂食嚥下機能(せっしょくえんげきのう)は、生きるために必要な栄養を口から胃へ送り込む一連の過程です。生命維持に欠かせない身体機能の一つです。摂食嚥下機能の低下は、栄養不足や誤嚥性肺炎などを引き起こす要因となります。

 

お口の健康体操で機能回復を目指す

 

摂食嚥下障害にならないためにはどうしたらよいでしょうか?
お口の健康は、放っておくと少しずつ悪化していきます。ですから健康な状態に戻せるオーラルフレイル、口腔機能低下症の段階で対処することが大切です。

 

歯科医院で口腔機能低下症と診断された場合、治療はどのように行うのですか?
機能低下のみられる項目の改善策を指導し、実践していただきます。
口腔乾燥 お口をよく動かすようにして、水分摂取やうがいを適切に行うようアドバイス。唾液腺マッサージも効果的です。
低舌圧 舌の体操が効果的です。
咬合力低下・咀しゃく機能低下 義歯、う蝕、歯周病などの歯科治療を受け、咬み合わせをきちんと治す必要があります。咬み応えのある食事を摂ることも大切です。
舌・口唇機能低下 早口言葉や滑舌の練習で、舌や唇を素早くしっかり大きく動かしましょう。唇や頬の力を鍛える道具もあります。
嚥下機能低下 飲み込みの力を鍛えるリハビリや呼吸訓練を行います。障害がある場合は、飲み込みの検査をします。 
改善策を実践していただき、数か月後に再度評価することでも、効果を確認できます。

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
八十島 恵美 先生(やそじま えみ)

東京歯科大学卒業。
老年歯科学会会員、摂食嚥下リハビリテーション学会会員、障害者歯科学会会員。口腔機能低下の評価とリハビリの提案に積極的に取り組む。趣味はゴルフ。

身近な難病

関節リウマチの今を知る(前編)

「手がこわばる」「関節がはれて痛い」などそのつらさを他人にはわかってもらえない関節リウマチ。ひと昔前までは、一生痛みとつきあわなければならないと考えられていましたが、今、関節リウマチの治療は大きく進歩しています。今回から2回に渡り、フジ虎ノ門整形外科病院の橋本淑子先生に最新の関節リウマチ医療について教えていただきます。

圧倒的に女性に多い慢性炎症性疾患

 

関節リウマチとはどんな病気ですか?
全身の関節が腫れて痛み、放置すると骨の破壊や変形をきたす、原因不明の慢性炎症性疾患と定義されています。大体100人に1人、1%の割合で発病すると言われていて、圧倒的に女性に多い病気です。多くは30〜50代で発病しますが、最近は高齢化が進んできて、以前より高齢発症のリウマチ患者が増えてきています。

 

女性に多いのはなぜですか?
やはりホルモンの影響が環境因子の中で大きなストレスになるのではないでしょうか。私は50代の女性の患者さんに遭遇することが多く、やはり更年期は発病のストレスになっているのではないかと思います。

 

リウマチを発症する原因は何ですか?
病気の原因については未だ不明ですけれども、双子の片方がリウマチだともう片方の兄弟に10%から30%の割合でリウマチを発病することから、遺伝因子の関与が推測されています。ただ100%ではないので、遺伝因子のほかに環境因子として喫煙、ウイルス感染、最近注目されている歯周病、それから性ホルモンが発症の要因ではないかと考えられています。特に更年期の女性に多いことからも、ホルモンバランスの乱れが異常を起こし、その結果、自分自身を攻撃するような免疫異常が起こり、それがリウマチの要因であると推測されています。

 

主な症状は?
関節にある滑膜(かつまく)という骨を覆っている膜に免疫異常による炎症が起こり、それが続くと骨が破壊され変形するというのが関節リウマチの一番の病態です。(イラスト1参照)症状には個人差がありますが、一番多いのは関節炎です。朝起きた時に手がこわばる、節々が痛む、腫れるといった症状が多いです。
小さな関節の方が症状の出る確率は高くなり、比較的大きな関節は侵されにくいです。全体を見ますと、一番起こりやすいのは手首と手の指。第2関節、第3関節が一番多いですね。(イラスト2参照)ただ、
リウマチは全身の病気ですので、だるさとか、心臓・肺・皮膚など全身のあらゆる部分に異常をきたすことが知られています。(イラスト3参照)

 

診察と血液検査に基づき専門医が診断

 

どのように診断を行いますか?
診断については、2010年のACR/EULAR(アメリカリウマチ学会・ヨーロッパリウマチ学会)が共同で作成した「関節リウマチの分類基準」を元に診断をしています。一つ以上の関節に腫れがあって、さらに手の関節がいくつ腫れていたら何点というふうに、点数をつけていき、6点を満たすとリウマチと診断します。点数は小さな関節の方がスコアが高く、大関節が腫れていてもゼロなんです。そうするとたくさんの関節が腫れている人はリウマチの反応が陰性であっても、リウマチである確率は高くなります。簡単に言うと、
●いくつかの関節の腫れや痛みがある
●血液検査でリウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性
●関節炎の持続期間が6週間以上続いている
●炎症反応がある(血沈・CRPの数値が高い)
これらを総合的に見て判断することになります。

 

初めての場合は検査から?
そうですね。リウマトイド因子・抗CCP抗体はかなり特異度が高いので、これが出ていたら、ほぼリウマチと診断していいでしょうし、いま症状が出ていなくても、数年後には発症する可能性が4〜5割あります。それから滑膜の組織から出るMMP|3という物質も関節破壊の指標になり、数値が上昇していると、関節の破壊が進行していることになります。
他の病院で血液検査を受けて陽性だった場合でも、もう一度診断基準に照らし合わせて、スコアが6点以上を満たしていれば、すぐに治療に入ります。また、関節の腫れが10か所以上あって、炎症反応の数値が高く、関節炎が6週間以上続いているなど、明らかに症状がある場合には、すぐに治療を開始することもあります。(次号に続きます)

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
橋本 淑子 先生(はしもと よしこ)

昭和62年、高知医科大学卒業。
日本リウマチ学会 リウマチ専門医、
日本リウマチ学会 リウマチ指導医、
日本リウマチ学会 評議員、
日本内科学会認定内科医、
総合内科専門医、
日本整形外科学会 会員。
リウマチの高度な知識と豊富な治療経験を持つリウマチ専門医・指導医として、患者さんのみならず医師からも頼りにされる存在。

身近な難病

関節リウマチの今を知る(後編)

関節が破壊されて変形し日常生活が困難になる関節リウマチ。しかしこの20年間で治療が進歩し効果も上がっているそうです。前回に引き続き、フジ虎ノ門整形外科病院の橋本淑子先生に最新の関節リウマチの治療について教えていただきます。

4本柱の治療で寛解を目指す

 

初期に発見すれば治りが早いのでしょうか?
はい。昔は長年患うと変形がひどくなると考えられていたのですが、現在では発病2〜3年で最も骨破壊が進行することがわかっています(グラフ参照)。そのため2年以内に治療を始めると、その後の骨破壊の進行はかなり抑制できるようになりました。治療の目的は、寛解を目指すことです。難しい言葉ですが、治るということではなく、治療を続けていい状態を保つということです。

 

治療はどのように進めていくのですか?
治療には、患者さんの生活指導をする基礎療法、薬物療法、手術療法、リハビリ療法の4本の柱があります。薬物療法はこの20年できわめて進歩しています。これはあとで詳しくお話します。手術療法は、昔はひざの関節の手術や滑膜切除の手術が多かったのですが、現在では手の関節の手術が増えています。
基礎療法についてですが、ひとつにはタバコを吸うと危険因子が倍ぐらいに増えますので、禁煙は必要だと思います。歯周病菌が慢性炎症や自己免疫疾患に関与していると言われていますので、口腔ケアをすること。それから風邪をきっかけに具合が悪くなったり発病したりしますので、ウイルス感染を予防することも大切です。リウマチの患者さんは腎臓病や心臓病を患っている方も多いので、食べ物の指導や血圧の管理など、生活習慣病をケアしていく必要もあると思います。
食事についてはいろいろありますが、良質のタンパク質を魚で摂ること。あとリウマチ患者さんは骨粗しょう症の比率が高いので、カルシウムとビタミンDを摂るとよいでしょう。その他に、腸内細菌がリウマチに関与すると言われていますので、食物繊維を摂ることもすすめています。お酒は少量であれば問題ありません。

 

診察と血液検査に基づき専門医が診断

 

進歩したという薬物療法について教えてください。

今から20年以上前はリウマチに対するよい治療がなく、多くの方は関節が変形して寝たきりになったり、仕事ができなくなったりしていました。ところが1999年に承認された「メトトレキサート」という薬によって、リウマチの治りが非常に良くなりまして、5〜6割の患者さんが寛解、もしくは低疾患活動性に至るようになりました。それ以来、重篤な肝障害などの禁忌がなければ、メトトレキサートをアンカードラッグとして投与します。これで寛解に至らなかった場合には、「生物学的製剤」という薬を使います。さらに「JAK阻害薬」という新しい薬も出てきて、リウマチに対する治療戦略は非常に幅広くなっています。

 

この20年で素晴らしい変化が起きたのですね。
リウマチ治療にとってはまさに画期的で、今は早期に診断して治療すれば、骨破壊も進まないまま普通の人と同じ生活ができる時代になっています。ただ、残念ながら正しく診断できずに病気が進行してしまう患者さんもいます。ですからまずはこの病気を知っていただいて、早い段階で専門医による治療を始めることが一番大事だと思います。

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
橋本 淑子 先生(はしもと よしこ)

昭和62年、高知医科大学卒業。
日本リウマチ学会 リウマチ専門医、
日本リウマチ学会 リウマチ指導医、
日本リウマチ学会 評議員、
日本内科学会認定内科医、
総合内科専門医、
日本整形外科学会 会員。
リウマチの高度な知識と豊富な治療経験を持つリウマチ専門医・指導医として、患者さんのみならず医師からも頼りにされる存在。

あなたは大丈夫!?

骨粗しょう症(前編)

骨の強度が低下して、骨折しやすくなる「骨粗しょう症」。骨折した箇所によっては寝たきりになることもあり、元気で自立した生活を送れる健康寿命を縮めてしまいかねません。
今回と次回の2回に渡り、ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院院長の廣田健児先生に、骨粗しょう症について教えていただきます。

年齢とともに増加寝たきりになることも

 

骨粗しょう症とは、どのような病気ですか?
骨粗しょう症とは、骨がスカスカ状態ということです。私たちの骨は大体材木と同じぐらいの硬さがあるんですが、骨粗しょう症の方はウエハースと思っていただければ間違いないと思います(下記イラスト参照)。女優の桃井かおりさんが最近コマーシャルで言ってますよね、「いつの間にか骨折」って。
高齢になるといろんな身体能力が衰えてきますが、骨のカルシウムもどんどん減っていきます。しかも、いくら食事でカルシウムを摂っても骨にはくっつかない。するとだんだん背が縮み、背中が曲がり、ちょっとしたことで骨折して、さらには寝たきりになって寿命が短くなります。骨の病気なんですが、人間の生活能力に非常に大きく関わっていて、1回骨折すると10年ぐらい寿命が縮みます。
それぐらい大変な病気なんです。
平均寿命と健康寿命の差は、女性で12年、男性で9年ですが、やっぱりこの差は大きくて、寝たきりで長生きしても、ちっとも面白くないですよ。だからそのためにも骨折しないということはすごく大事なんですね。血圧が高くても糖尿病でも動けますが、腰痛とか膝が痛いとかで動けないと、あっという間に老化が進んでしまいます。

 

腰痛、ケガで骨折、背中が曲がったら病院で検査を

 

何歳ごろから発症しますか?
大体60歳くらいですね。桃井かおりさんのコマーシャルでも、65歳を過ぎたら検査しましょうと言っています。
骨粗しょう症は女性が圧倒的に多いんです。男性に比べると。それはなぜかというと女性ホルモンの問題で、若い時はいいんですけど、閉経後、急激に女性ホルモンが減ると骨粗しょう症が進行するんです。
年齢だけではなく、既往歴も関係してきます。腫瘍などで卵巣を取っちゃったという人もいるわけですね。そうすると、30代くらいで取った人は50代くらいで骨粗しょう症が始まってしまうんです。ですから「昔、婦人科の病気をして、卵巣も子宮も取っちゃっているんです」と言う人はすぐ検査をします。男性も長生きしていれば骨粗しょう症になることがありますが、ほとんどが女性ですね。

 

どんな症状が出ますか?
病院に来られる方は腰痛、あるいは転んでケガをしたとか、外傷の場合が多いです。骨がもろくなったために転ばなくても腰痛が出て、調べると骨粗しょう症ということもあります。
あとは背が縮んだ、背中が丸くなったという症状が、特に女性に多いです。骨のおなか側がつぶれるんですね(上記イラスト参照)。背中側は比較的構造物が多いので支えられますけど、おなか側はそれがないですから。そうするとアーチのようにだんだん背中が丸くなってしまいます。(次回に続く)

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ツル虎ノ門外科
リハビリテーション病院

山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
院長 廣田 健児 先生

昭和53年、杏林大学卒業。救急医学会専門医、日本整形外科学会リウマチ専門医、麻酔科標榜医、日本医師会認定産業医。診察ではユーモアたっぷりの会話で患者さんを笑わせ、元気づけるやさしい一面も。著書に、多忙な業務の合間を縫って旅した世界遺産の写真とエピソードが満載の「ドクターケンジの旅日記」がある。

あなたは大丈夫!?

骨粗しょう症(後編)

年齢とともに増加する骨粗しょう症。骨がもろくなって骨折しやすくなるため、適切な治療と食事・運動療法により、骨の強度を高めることが大切です。
前回に引き続き、ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院院長の廣田健児先生にお話を伺いました。

骨密度により診断治療は服薬が中心

 

骨粗しょう症の診断方法は?
骨の中のカルシウムの密度を特殊な機械で調べれば、ものの10分でわかりますね。同い年の人を100%として、80%以上あれば正常、70〜80%は危険です。69%以下は骨粗しょう症ですから、すぐに治療を始めます。

 

治療はどのように行いますか?
今は薬でカルシウムを増やせます。カルシウム剤を飲むというと「牛乳をたくさん飲んだらいいじゃないか」と言われるかもしれませんが、そうではなくて摂取したカルシウムを骨にくっつけるために、特殊な薬が必要なんです。
もう一つは、骨も新陳代謝してますから、新しくするために削る方もあるんですね。これが活発になると、どんどん骨が痩せていく。そうさせないために、骨の新陳代謝を遅らせる薬もあります。それとビタミンD。ビタミンDはカルシウムを骨にくっつける大事な作用があるんです。ただし1日30分くらい日に当たれば体内でビタミンDを作れるので外で仕事したり畑に行く人は必要ありません。外に出ない、日に当たらないという人にはビタミンDの錠剤を飲んでもらいます。

 

運動・食事で骨粗しょう症対策

 

骨粗しょう症になる人とならない人の違いは何でしょうか?

やっぱりアクティビティの高い人は骨粗しょう症にならないんです。例えば風雨にさらされる松の木は頑丈ですが、温室の中に生えてる松はひょろっとしてますよね。人間にもそんなところがありまして、重い物を持ったり、運動したりしている人は骨に刺激が加わってるので、骨も一生懸命カルシウムを取って、来たるストレスに備えようとします。ところが重たい物は持たない、外へ出ない、旅行も行かないという人は、動かないからカルシウムが必要なくなって、たまに思いついたように運動しようとすると、転んで骨折するというわけです。そういう人におすすめなのが「かかと落とし」です(イラスト参照)。全身の骨に刺激が行き渡るので、骨もカルシウムをつけて頑張ろうとしてくれます。

 

骨のために日頃から摂った方がいい食品はありますか?

カルシウムが含まれる食品はたくさんありますが、基本的には乳製品です。牛乳を飲むと下痢する人はヨーグルトとかね。乳製品が全然ダメだったら、納豆とか、本人の好きなものでいいんです(イラスト参照)。 これは骨粗しょう症に限らないけど、嫌いなものを鼻つまんで飲み込んだって栄養にならないですし、食事が苦痛になるから、自分の好きなものを選んで食べればいい。これは大事なことで、やっぱり1日3回おいしく楽しく食べないと。「あの医者に言われたから、これも食うか」ではなくて、「医者が勧めてたし、好きだから食べるよ。あぁおいしいね」と食事をしてほしいですね。

 

希望を持つことで体のチャンネルが治る方向に向く

 

最後に廣田先生から読者の皆さんにひと言お願いします。

僕が診察で心がけているのは、「こうすればよくなるよ」という道しるべを示すこと。それによって「まだ捨てたもんじゃない」という気持ちを持って診察室から出て行ってほしい。これをやったら治るっていう希望を持つことが大事で、そこでたぶん体の中のチャンネルが治る方向に向いていくんだと思うんだよね。 特にこの病気はそれが大事なことで、背が縮んだり、腰が曲がったり、骨折したりするのは誰でも楽しいことじゃないわけですよね。だけど骨折を少なくする、痛みを少なくするためのいろいろな手立てをして、少しでも元気になってもらいたいと思っています。今は市町村の健康診断でも骨密度検査がありますし、そこで引っかかったり、自分で骨粗しょう症が心配だなと思う人は、一度整形外科病院で詳しく調べてみることをおすすめします。

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ツル虎ノ門外科
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山梨県都留市四日市場188
電話:0554-45-8861
診療科:整形外科・外科・リハビリテーション科・脳神経外科・麻酔科・リウマチ科
施設認定等:総合リハビリテーション承認施設
休診日:無し(年中無休)

ツル虎ノ門外科リハビリテーション病院
院長 廣田 健児 先生

昭和53年、杏林大学卒業。救急医学会専門医、日本整形外科学会リウマチ専門医、麻酔科標榜医、日本医師会認定産業医。診察ではユーモアたっぷりの会話で患者さんを笑わせ、元気づけるやさしい一面も。著書に、多忙な業務の合間を縫って旅した世界遺産の写真とエピソードが満載の「ドクターケンジの旅日記」がある。

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